透析の種類 血液透析(HD)について

血液透析は体の外に導き出した血液を透析器に通して、血液中の余分な水分や老廃物などを取り除き、アルカリなど必要な物質を補充してきれいになった血液を体の中に戻す治療法です。ほとんどの場合、病院や診療所で、週2~3回、1回4~5時間行い、透析装置など特別な設備を必要とします。日本では透析患者さんの97%が血液透析とその類縁の治療を行っています。

血液透析の原理

血液透析では「拡散」と「限外ろ過」の原理を用いて血液をきれいにしています。

拡散

水に溶けた物質(溶質)は、半透膜(透析膜)を介して濃度の濃い方から薄い方へ移動し、均一な濃度になる性質があります。この現象を拡散といいます。血液透析の場合、からだにたまった(濃度の高い)不要な物質は透析膜を介して体の外(透析液)側に、体に不足した必要な物質は濃度の高い透析液側から膜を介して血液側に
移動し、血液をきれいにします。

限外ろ過

半透膜(透析膜)の片側の物質を溶かした水(水溶液)に圧力がかかると、水溶液の水や溶液中の物質は膜の反対側に押し出されます。これを限外ろ過といいます。血液透析の場合、血液側から透析液側へ圧力をかけて、血液中の余分な水分や老廃物、電解質などを膜の外に押し出し、体内の余分な物質や水分などを除去して血液をきれいにします。

血液透析の実際

血液透析では、病院や診療所で作製したきれいな水と透析剤の原液を混ぜて透析液をつくります。できた透析液は患者さんのベッドの横まで届けられ、透析器の中で血液中の老廃物を受け取り、透析液中の必要な物質を血液に移動して、きれいになった血液が体内に戻ります。

血液透析を始める前に

血管アクセスを造る

血液を体の外に取り出す出口と、きれいになった血液を戻す入り口を作ります。通常前腕の血管の静脈と動脈とを手術で皮膚の下でつなぎ合わせ、動脈の血液が直接静脈に流れるようにします。血液が動脈から静脈に直接流れる近道(短絡路)を作るのでこれをシャントと呼びます。たくさんの血液が流れる静脈は、やがて太く盛り上がり太い血管となります。この血管にはたくさんの血液が流れていて、この血管に針を刺し血液を導き出して透析器に送り、きれいになった血液を再び血管に戻します。このような人工的に作った血液の出入り口を血管アクセス(血管出入口)と呼んでいます。

血液透析では大量の血液(1分間に200mL以上)が必要なので、これだけの量の血液を容易に、安全に取りだすためには血管アクセスが不可欠になります。

血液透析治療で必要なものは?

透析器(ダイアライザ)

透析器は患者さんの腎臓の働きを代替する人工臓器です。

透析器の構造は?

透析器の中には細いストロー状の管(中空糸)が一万本程度入っています。
この管には非常に小さな孔がたくさんあいていて、水や分子量(分子の大きさ)の小さな物質は通ることができますが、体に必要な血球やたんぱく質、細菌やウイルスはサイズが大きいためこの孔を通ることができません。この小さな孔を通って体に不要なものは透析液に捨てられ、必要なものが透析液から血液に補充されます。

透析液

透析器の透析膜(中空糸)の外側を流れ、血液から透析膜を介して不要な水分や老廃物受取り、体に足らない物質を血液側に受け渡す溶液です。

透析液には何が入っているの?

透析液には正常な血液に近い濃度の電解質などが含まれています。

ナトリウム / カリウム / カルシウム / マグネシウム / クロール / 重炭酸(炭酸水素) / ブドウ糖

透析液の役割は?

透析患者さんでは、血液中のカリウム、マグネシウム、リン濃度が高くなり、カルシウムや重炭酸濃度が低くなってきます。透析液では、血液よりカリウム、マグネシウム濃度を低くし、リンは含まなくすることでこれらを血液から除去し、重炭酸濃度などを高くすることで血液に補給しています。

抗凝固薬

体の外に導き出した血液が透析中に固らないよう作用する薬剤です。

透析装置

血液透析では、水をきれいにする装置、透析液をつくって患者さんのベッドに届ける装置、患者さんが安全に血液透析をおこなえるように見守る装置を使用します。

水処理装置

水道水から不純物(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、細菌汚染物質など)を取り除いてきれいな水をつくる装置です。血液透析では、患者さんから老廃物を取り出すために大量の水を使用します。

透析液供給装置

きれいな水と濃い透析液を混ぜて決められた濃さの透析液を作成して、個々の患者さんに届けるための装置です。

コンソール(患者監視装置)

患者さんのベッドサイドにある装置で、透析液や血液の流れ、除水量・速度、透析液の温度、抗凝固薬の注入量などを調節・監視する装置です。

血液ろ過と血液透析ろ過について

血液透析(HD)には、血液ろ過(HF)と血液透析ろ過(HDF)という類似の治療法があります。

血液ろ過(HF)

治療方法

主な原理:限外ろ過
透析器と同じ構造をした血液ろ過器(ヘモフィルタ)を使用して、血液中の水分と老廃物、電解質を限外ろ過によりろ液として除去します。除去したろ液の代わりに透析液もしくは透析液と類似した成分の補充液を回路より血液内に注入します。1回の治療でろ液として除去する量は、通常体重の1/3以上とされています。

特徴

HDと比べると分子量の大きな物質の除去に優れていますが分子量の小さな物質の除去はHDに劣ります。

血液透析ろ過(HDF)

治療方法

主な原理:拡散+限外ろ過
血液透析ろ過器(ヘモダイアフィルタ)を用いて血液透析と血液ろ過を同時に行う方法で、血液透析と血液ろ過の長所を兼ね備えた治療法です。補充液をヘモダイアフィルタより前で補充する「前希釈」とヘモダイアフィルタより後ろで補充する「後希釈」があります。

特徴

HDと比べると分子量の大きな物質の除去に優れ、HFと比べると分子量の小さな物質の除去に優れています。

オフラインHF/HDFとオンラインHF/HDFの違い

HFとHDFには使用する補充液の違いでオフラインHF/HDFとオンラインHF/HDFに分類されます。

オフラインHF/HDF補充液として市販されている溶液を使用します。
オンラインHF/HDF補充液に清浄化された透析液を使用します。
オンラインHF/HDFを実施するには、専用の装置と厳格な清浄化管理の下作成された透析液が必要です。

治療スケジュール

一般的な治療の回数は週2~3回で、1回4~5時間かけて治療を行います。昼間(Aさん)、夜間(Bさん)の他にもCさんのように夜の睡眠時間を利用して6~8時間程度治療を行う終夜透析(オーバーナイト透析)もあります。

スケジュール例
Aさん7:30~12:307:30~12:307:30~12:30
Bさん18:00~22:0018:00~22:0018:00~22:00
Cさん22:00~6:0022:00~6:0022:00~6:00
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