不妊治療って?
生殖補助医療(ART)という選択肢
ARTとは?
生殖補助医療(ART)という選択肢
「生殖補助医療(ART)ってどんな治療?」という疑問をもつ方にむけて
不妊治療は「タイミング法」や「人工授精」といった一般不妊治療と「体外受精」や「顕微授精」といった生殖補助医療に大別されます。ここでは生殖補助医療(ART)について解説していきます。
「ART」とは「Assisted Reproductive Technology」の略で、妊娠を成立させるために体外で精子、卵子を取り扱い、得られた受精卵を培養後に子宮に戻す治療法・技術のことです。
監修:医療法人 浅田レディースクリニック 副院長 福永憲隆先生
CONTENTS
ARTとは?
ARTってどんな治療?
妊娠はどのようにして成立するのですか?
通常の妊娠は以下のようなプロセスで成立します。
- 卵巣から卵子が1つ排卵され、卵管に取り込まれる
- 膣内に射精された精子が、子宮と卵管を通って卵子を目指す
- 卵子と精子が卵管内で出会い、受精する
- 受精卵は成長しながら、卵管から子宮へと移動する
- 子宮に到達した受精卵が子宮内膜に着床する
妊娠するにはたくさんのプロセスが必要ですね。
このプロセスに問題があって妊娠することが難しい方を対象として不妊治療を行います。まずは、一般不妊治療と呼ばれる「タイミング法」や「人工授精」を一定期間行い、妊娠しない場合は、「体外受精」や「顕微授精」といった生殖補助医療(ART)へとステップアップで治療を進めていきます。ARTでは、体内で起こるプロセスの多くを体外で代わりに行うことになります。
どうやって精子や卵子を体の外に取り出すのですか?
精子は射精された精子を用いますが、精液中に精子が無い人は手術により精子を作っている精巣から精子を見つけることが出来る場合もあります。卵子は、膣を通じて針を刺して卵巣から吸引をして取り出します。
体外受精(c-IVF)ってどんな治療?
体外受精ってどのようにして行うのですか?
体外受精では、卵巣から卵子を取り出し、精子と一つの場所にいれて、受精を待ちます。そうしてできた受精した卵を、数日間育てて子宮に戻します。受精した卵のことを胚といい、胚が育つことを発生、胚を体の外で育てることを胚培養、育った胚を体の中に戻すことを胚移植といいます。体外受精、胚培養、胚移植にはそれぞれの目的に合った培養液という特殊な液体が必要となります。
培養液の中で受精卵ができるのですね。
どんな人がこの方法の対象となりますか?
一般不妊治療で妊娠できなかった人の次のステップとして、体外受精を行います。
顕微授精と並行して治療することもあります。
顕微授精(ICSI)ってどんな治療?
体外受精と顕微授精ではどんな違いがありますか?
顕微授精では、顕微鏡を使って1つの精子を選び、細い針を用いて卵子に直接注入して受精させます。そのあとは、体外受精と同じで、数日間培養後に胚移植します。
顕微授精は精子を直接卵子に注入するのですね。
どんな人がこの方法の対象となりますか?
体外受精で受精しなかった場合や、精子の数が非常に少ない方が対象となります。
ARTの流れ
ARTの一連の流れは?
体外受精や顕微授精がどんな治療か分かりました。
実際の治療の流れを教えてください。
ARTの一連の流れを下記に示しています。
体から卵子を取り出す(採卵)時は、飲み薬や注射剤を使って卵子を体の外に取り出しやすい状態にすることが多いです。
また、体外受精や顕微授精でできた受精卵は、凍結保存することができます。いくつかの受精卵ができた場合は、凍結保存しておいて、次の治療でその受精卵を使うこともできます。
- 飲み薬や注射などの排卵誘発剤を使った卵巣刺激
- 採卵(通常、麻酔をかけて卵子をとります)
- 採精
- 体外受精もしくは顕微授精
- 受精を確認し、受精卵を培養する
- 胚移植(通常、麻酔をかけません)
- 胚凍結保存 (液体窒素で急速冷凍することで長期間凍結保存できます)
これらの過程の多くは胚培養士が行います。体の中に戻されるまでの間、胚培養士の管理のもと、受精卵は清潔でなるべく体の中に似た環境の中で大切に育てられます。そのような環境を卵子や精子、受精卵に提供するために、様々な機器や培養液などが必要です。
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ARTの治療成績
ART治療を受けると出産できるの?
ART治療を受ければ出産できますか?
2021年のデータでは、体外受精・顕微授精などのARTの実施回数は約50万回(周期)で、移植あたり新鮮胚移植の15.1%が、凍結融解胚移植の26.6%が出産に至っています。また、この年に生まれた子どものうち8.6%(11.6人に1人)がARTによって生まれたと報告されています。※1
また、年齢が高くなるとともにARTにより妊娠・出産できる確率は下がっていくので、不妊治療を行うのであればなるべく早く治療をスタートすることが大切です。
- 「2021年ARTデータブック」(公益社団法人日本産科婦人科学会)