輸液について 輸液について学ぼう
からだの水分について学ぶ
輸液の目的には「水分・電解質の補充」「栄養の補充」「血管の確保」などがありますが、その中でも最も重要なのが「水分・電解質の補充」です。
では、どうして水分はからだにとって大切なのでしょうか?
からだにはどのくらい水分があるの?
私たちのからだの約60%は水分でできていて、からだの中でもっとも多い割合を占めています。
一般的に年齢とともに水分量は減っていき、男性と比べると女性の方が水分量は少なくなります。

からだの水分にはどんな役割があるの?
からだの水分と聞いて一番に思いつくのは「血液」かもしれません。
血液は酸素や栄養分を全身にとどけて、からだに不要なもの(老廃物)を回収する役割があります。
また、暑いときに汗を出して熱を下げるなどの体温調節もからだの水分の重要な役割です。
からだの水分が不足するとこれらの役割が機能しなくなるため、酸素や栄養が届けられず、老廃物がからだにたまり、体温調節ができなくなるなど、命にかかわる危険性もあります。


からだの水分はどこにあるの?
からだの水分のうち、体重の40%は細胞の中にあり、体重の20%は細胞の外にあります。また、細胞の外の水分はさらに血漿と間質液にわかれていて、それぞれ体重の5%と15%になります。つまり、からだの中の水分のうちで「血液」にあたるのは、体重のわずか5%にすぎません。


からだの水分は「水」でできているの?
からだの水分は「水」と「電解質」と「たんぱく質」などでできています。
水と電解質を一定のバランスに保つことで健康状態が維持されます。
喉が渇くのはどうして?
それはからだの水が不足しているサインです。
汗をかいたりしてからだの水分が減少し、血液が濃くなると、脳にからだの異常として信号を送ります。この信号を脳がキャッチすると口喝中枢が反応して「喉が渇いた」状態になり、私たちは水を飲むことで血液の濃さが薄められます。
1日に必要な水分量はどのくらい?
大人が1日に必要な水分量は約2.5Lです。
では、なぜ2.5Lの水分を摂取する必要があるのでしょうか。それは、汗や尿、便などで1日に約2.5Lの水分が体外に排出されるからです。
「1日に必要な水分量=1日に排出される水分量」となることで、からだの中の水分量が一定に保たれます。
そのため、「スポーツをしていつもより汗をかいた」といった日は水分の排出量が2.5Lより多くなる(尿の量は減る)ため、必要な水分量も多くなります。

輸液について学ぶ
私たちのからだは普段の食事や飲み物から水分や栄養を摂取して生命を維持しています。
そのため、何らかの理由で水分や栄養が不足した場合は輸液によって補う必要があります。
たとえば、熱中症などで脱水になったときや、手術や検査のために水が飲めないときなどには、輸液が必要になります。
輸液ってなに?
輸液にはどんな種類があるの?
輸液には「水分補給輸液・電解質輸液」「栄養輸液」などがあります。
水分補給輸液・電解質輸液
からだの不足した水分や電解質を補って、からだの水分バランスを正常な状態になおすために使います。

栄養輸液
エネルギーの補給やアミノ酸の補給など栄養状態を是正するために使います。

「水」を点滴したらダメなの?
絶対にダメです。水を投与すると血液の浸透圧が赤血球の浸透圧より低くなり、赤血球に水が入って膨らみ破裂(溶血)してしまいます。
輸液の基本製剤である生理食塩液は0.9%食塩水(水1L中に塩(NaCl)9g)にすることで、浸透圧を血漿とほぼ同じにしているので、溶血が起こることはありません。

5%ブドウ糖液は水1L中にブドウ糖が50g入っていて、その浸透圧は血漿とほぼ同じで、溶血は起こしません。ブドウ糖は体内で代謝されると「水」と「炭酸ガス」になるため、5%ブドウ糖液を点滴することは、溶血を起こさない「水」を点滴したことになります。
輸液でよく出てくる用語について学ぶ
電解質ってなに?
電解質とは、水に溶けると「陽イオン」と「陰イオン」に分かれて、電気を流す物質のことです。例えば、「塩(NaCl)」を水に溶かすとNa⁺(陽イオン)とCl⁻(陰イオン)に分かれます。この「Na⁺」と「Cl⁻」がそれぞれ電解質です。

電解質の役割
電解質は筋肉の収縮、神経の伝達、水分量の調節、骨や歯をつくるなど、からだにとって重要な役割を果たしています。
からだの水分に含まれる電解質
主な陽イオン
Na⁺(ナトリウムイオン)
K⁺(カリウムイオン)
Mg²⁺(マグネシウムイオン)
Ca²⁺(カルシウムイオン)
主な陰イオン
Cl⁻(クロールイオン)
HCO₃⁻(重炭酸イオン)
HPO₄²⁻(リン酸水素イオン)
SO₄²⁻(硫酸イオン)
スポーツをするときに水よりスポーツドリンクの方が良いという話を聞いたことがあるかもしれません。これは、汗によってからだの中の「水」だけではなく、「電解質」も一緒に失われいるためです。
浸透圧ってなに?
浸透圧は半透膜をはさんで起こる「水を引っ張る力」のことです。
半透膜とは?
私たちの細胞の表面の膜(細胞膜)には細胞に必要な物質だけを通し、不要な物質は通さないフィルターの働きがあり、このフィルターを「半透膜」と呼びます。
半透膜には小さな穴がたくさんあいていて、水などの小さな物質は通しますが、大きな物質は通さないという性質があります。コーヒーのフィルターをイメージするとわかりやすいかもしれません。
浸透圧はどのように起こる?
半透膜で隔てた容器の左側に「水」、右側に「食塩水(塩化ナトリウム水溶液)」を入れた場合どのようなことが起こるでしょうか。
- 水は半透膜を自由に移動できますが、塩化ナトリウムは粒子が大きく半透膜を通ることができません。そのため、左右の濃度を合わせるために左側の水が右側に移動します。
- 水が右側に移動すると、左と右で水面の高さが変わります。
- 右の水面に圧力を加えて無理やり左右の水面の高さを合わせようとします。このとき必要な圧力が浸透圧です。

糖質ってなに?
糖質はからだのエネルギー源で4kcal/g のエネルギーを持っています。輸液に使われる糖質には、ブドウ糖、果糖、キシリトール、ソルビトール、マルトースなどがあります。
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