研究開発 細胞構築受託サービス

  • 扶桑薬品工業では、CHO 細胞を用いた恒常発現細胞株の構築サービスを行っています。
  • CHO 細胞発現系では、糖鎖修飾等の翻訳後修飾が付加されるので、機能的なタンパク質の生産が期待されます。
  • 抗体等の分子量の大きい・複雑なタンパク質の発現も可能で、さまざまな用途 ( 検査試薬用の抗体や細胞培養時に使用するタンパク試薬等 ) に利用できます。

タンパク質大量発現細胞の構築について

  • 当社では、北海道大学教授、鈴木定彦先生のご協力の元開発した、高発現ベクター ( 図 1 ) に目的タンパク質の cDNA を導入し、CHO DG44 細胞を宿主として発現させます。
  • このプラスミドが細胞内のゲノム中で高発現部位 ( 転写ホットスポット ) に組み込まれた細胞だけが効率よく生育できるように設計されています。
  • 私たちの検討では、他社の発現系と比べ 7 倍以上の産生量を示し、高産生 ( 図 2 ) かつ継代安定的 ( 表 1、図 3 ) な細胞株 ( セルプール ) が得られています。

実施結果例

図 1:ベクターマップ
図 2:初期細胞株 ( セルプール ) での産生量の比較
同じターゲット ( 抗体分子 ) をA 社発現系と扶桑発現系の両方で発現させ、取得したセルプールの産生量を比較しました。A 社発現系で得られたセルプールを 1 としたときの扶桑発現系で得られたセルプールでの産生量の比率を示します。

表 1:取得したクローンの安定性
遺伝子増幅前遺伝子増幅後
7940
5032
63%80%

恒常発現細胞の安定性について確認しました。
CHO DG44 細胞では遺伝子増幅によりコピー数を増やすシステムがあるため、遺伝子増幅したクローンも取得し、それぞれのクローンを 60 代まで継代した際の安定性を比較検討しました。
①: 60 代 ( 60G ) まで継代したクローン数
②:①の細胞のうち、目的タンパク質の産生量が継代前の細胞 ( 0G ) における産生量と比較して70% 以上の生産性を維持していたクローン数
③:継代安定性 ( ②/① )


図 3:TOPクローンのフェッドバッチ培養における産生量の比率

表 1 で私たちが得たクローンのうち、0G における TOP クローン ( 最も産生量の高かったクローン ) の 60G における産生量は 、0G における産生量の 90% 以上を示しました。0G において産生量の高かったクローンが継代を重ねても産生量を落とすことがないことを示しています。

扶桑薬品工業の受託サービスについて

一過性発現細胞にて目的タンパク質の発現の確認

作業日数目安:6-8 週間

  • お客様よりご提供いただいたアミノ酸配列から最適な cDNA 配列を合成し、当社で開発したベクターに導入します ( 外部への再委託 ) 。
  • 得られたベクターを CHO DG44 細胞 ( Thermo Fisher Scientific K.K. より購入 ) に導入します。
  • 目的タンパク質の発現量等の確認※1 ( 発現確認:Western Blot、ELISA 等、濃度:ELISA、SEC 等 ) を行います。

    こちらの検討のみご利用いただくことも可能です。

恒常発現細胞集団 ( セルプール ) の作製

作業日数目安:10-12 週間

  • 発現ベクターを細胞に導入し、恒常発現細胞株を選別 ( ヒポキサンチン、チミジン不含培地 ) します。
  • 目的タンパク質の発現量等を確認※1 します。

Parent Cell Bank ( PCB:MCB 候補株 ) stock の作製

作業日数目安:15-17 週間

  • クローン化します。
  • フラスコ培養で生育を確認し Research Cell Bank ( RCB ) としてストックします。
  • RCB 各細胞における目的タンパク質の発現量等を確認※1 します。
  • PCB stock を作製します。
  • ご希望に応じて、PCB stock の継代安定性を確認します ( ご希望される継代数次第で作業日数が変わります ) 。
■オプション

クローン化の前にメトトレキサートを用いた遺伝子増幅を選択いただけます。
恒常発現細胞株選別の時点でも高い産生量は期待できますが、更に高い産生量を希望される場合にお勧めしております。
※作業日数目安は PCB stock 作製と併せ 27-33 週間程度になります。

詳細は、下記のお問い合わせ先にお問い合わせください。

セルプール又は PCB の培養及び精製※2

作業日数目安:6-8 週間

  • ご希望するスケールでの培養条件 ( リアクター、WAVE ) について検討します。
  • 培養スケールに応じた精製法を検討します。
  • 当社での対応が難しい大量培養及び精製につきましては、当社から CDMO に再委託し精製物を納品いたします。

※1:生物活性等、その他の測定項目につきましてはお問い合わせください。
※2:既に PCB あるいは MCB をお持ちのお客様におかれましては、培養及び精製のステップのみの発注にも対応いたします。

表 2:収量 ( 実施例 )
培養液 1 L あたり精製後   
His tag 融合タンパク質 A
( セルプール )
200-250 mg100 mg    
Fc 融合タンパク質 B
( クローン化 )
3.4 g1.8 g    
抗体 C
( クローン化 )
2.1 g1.2 g    

精製に関して

  • 抗体 ( IgG ) の精製は、ProteinA アフィニティクロマトによる精製を実施します。ご要望に応じて各イオン交換クロマトを組合わせた多段階での精製も実施いたします。
  • その他のタンパク質についても、各種クロマトにて精製が可能です。
  • 精製方法が確立されていないタンパク質につきましては、精製方法の検討 ( 精製カラムのスクリーニング~精製工程の確立 ) も実施可能です。

培養条件検討、精製検討に使用する装置について

・培養条件の検討
 フラスコ、Ambr® 15 ( Sartorius ) 等

・培養スケールアップ検討
 Ambr® 15、アドバンストコントロールバイオリアクターシステム BR1000 ( 横河電機株式会社 ) 等

・大量培養での検討
 ReadyToProcess WAVETM 25 ( Cytiva )

・精製検討 ( カラムスクリーニング、スケールアップ等 )
 ÄKTATM avant 150 (Cytiva)

実施施設

  • 細胞の構築及び培養はクリーンルーム内、必要に応じて同室内にあるクリーンベンチ内で実施します。
  • 得られたタンパク質の精製につきましては、一般の実験室内での実施となります。

納品物

納品物例

  • 試験計画書 ( ご依頼内容次第で、お客様と相談させていただきます )
  • 培養上清、精製物 ( 試薬として商用利用することも可能です )
  • 試験報告書 ( HPLC や電気泳動等にて実施したタンパク質の分析データを含む )
  • 発現ベクター ( 要相談、別途ライセンス費用が発生 )
  • 細胞株 ( 要相談、別途ライセンス費用が発生 )

納品/価格

詳細は、下記のお問い合わせ先にお問い合わせください。

本受託サービスについてのお問い合わせ

扶桑薬品工業株式会社 研究開発センター 創薬研究部バイオ医薬研究課

〒536-8523 大阪市城東区森之宮二丁目3番30号
E-mail : cellhandle@fuso-pharm.co.jp
Fax : 06-6964-2706